北嶋孝のアーカイブ
COLLOL「このままでそのままであのままでかみさま」
◎寒さと孤独、そして「ヨブ記」
鼎談(芦沢みどり、田口アヤコ、北嶋孝)
芦沢 今回のCOLLOLの公演『このままでそのままであのままでかみさま』について、最初に編集部からいただいたのは劇評を書かないかと言う話だったんですが、今回の作品は非常に色々な要素があるので、一人で書くよりは、鼎談にした方がいいと思ったんです。鼎談というより、私と北嶋さんが田口さんに質問する場になってしまうかと思うのですが。まずは会場のBankART Studio NYKですが、3月28日の夜、本当に寒くて使い捨てカイロを渡されて。その印象が強い。だだっぴろい横長の倉庫ですね。それでまずお聞きしたいのは、場所が先にあって、それに合わせて作品を作ったのか、それとも作品が先なんでしょうか。
スパンドレル/レンジ番外公演「花会」
- 2007年6月27日 22:58
- 北嶋孝
◎想像力への尋常ならざる触手
北嶋孝(マガジン・ワンダーランド)
子供のころ、桜の季節が過ぎると心底ホッとした。ぼくの生家は幸か不幸か公園に隣接し、いつも花見客のどんちゃん騒ぎに巻き込まれたのだ。深夜まで喧嘩騒ぎが続き、一升瓶で殴られた血だらけの酔客がよく救急車で運ばれた。残された反吐やゴミの山を翌朝かたずけるのがぼくらの仕事になる。桜の季節はうんざりする厄災、憂鬱の季節だった。
イディオ・サヴァン「黒縁のアテ」
- 2007年3月26日 00:49
- 北嶋孝
イディオ・サヴァン第2回公演「黒縁のアテ」は今年1月末に新宿タイニイアリス劇場で開かれました。だいぶ時間が経ってしまいましたが、小劇場レビュー新聞「Cut In」第58号に掲載された公演評を再掲します。
当日、劇場の前で主宰者がビデオ片手に呼び込みをしている姿を見かけてまずあれっと思いました。なにか仕掛けがあるらしいと思って地下の劇場にはいると、入り口の映像が正面のスクリーンいっぱいに映し出されているではありませんか。新宿2丁目の夜の街-。その漂流感は、手ぶれの激しい映像にぴったりです。外と内、地上と地下がデジタル回路でつながったまま芝居は始まります。中身は、演劇に関する演劇であり、しかも内と外が入れ子状になり、終わりがそのまままた始まりになるという複雑怪奇な円環構造になっていました。その環からはみ出したしっぽをめくってみたのが以下の文章です。
ポツドール特別企画公演「女のみち」
- 2006年9月18日 16:33
- 北嶋孝
公演が終わって2カ月もたってからの紹介は気が引けるのですが、まあご勘弁願って、ポツドール特別企画「女のみち」を取り上げます。三浦大輔作・演出の本公演(本番!)も意見が分かれますが(例えば「夢の城」公演評)、今回の特別企画の評価もだいぶ振り幅が大きかったようです。いつものように、肯定的評価から入って、だんだん問題の所在を洗い出していくという構成にしましょう。長くなりましたが、ご容赦を。
青年団若手自主企画「会議」
- 2006年8月13日 22:36
- 北嶋孝
◎滑らかな手法でツボを押さえる でも電信柱はどこへ…
演出の狙いが明確で、焦点が絞られた芝居をみるのは快適な気分です。枝葉を切り払い、ドラマツルギーにしっかりした見通しを与えるならなおさらでしょう。しかし枝葉と思ったのが隠し味だったり極めつけの伏線だったりするかもしれません。別役実作「会議」に取り組んだ青年団若手自主企画公演は、翻案・演出にまつわる悩ましい問題を浮き彫りにする例だったような気がします。
モモンガ・コンプレックス「他力ジェンヌ。」
- 2006年7月5日 11:01
- 北嶋孝
会場となった桜美林大学はずいぶん遠い。東京の西郊外から電車を乗り継いで2時間近く。JR横浜線淵野辺駅からバスでキャンパスに着いたけれど、集合場所に関係者らしき人影が見あたらない。広いキャンパスをうろうろしてやっと会場にたどり着いたら、バス停前に戻ってほしいと言われてとぼとぼ逆戻り。しかし困惑と苦労の甲斐がありました。モモンガ・コンプレックスのパフォーマンスを目の当たりにして気持ちが軽ろやかになりました。
青年団+文学座「職さがし」
- 2006年6月8日 00:30
- 北嶋孝
作品は1971年にフランスで発表されています。当時はポンピドーがドゴールの跡を継いで大統領になったばかり。「5月革命」の熱気が尾を引いているものの劇中でその余波はあまり感じられません。中高年の失業は社会問題になっていなかったようです(労働政策研究・研修機構「フランスにおける中高年の雇用」)。
再就職活動中の夫は40代半ば。勤め始める妻と、左翼活動に入れあげる16歳の娘との3人家族。それに企業の面接官(人事担当者)と併せて4人が、白で統一した服装で登場します。
危婦人「 大部屋女優 浜子 ~至福のランデブー~ 」
- 2006年6月1日 15:43
- 北嶋孝
「危婦人」は1998年旗揚げの女性劇団。風変わりな劇団名に引かれ、そのうえ「一見普通そうに見え、でもどこかおかしな女たち」がコンセプトと聞いて足を運びました(新宿・サンモールスタジオ、5月19日-28日)。女優とその隠し子、それに育ての母の、意地や嫉妬が絡むメロドラマ風の展開。歌と踊りを盛り込み、しっかり、こってり作られたエンタメ芝居という印象です。
デラルテ舎「プルチネッラ~その生と死の復活から」
- 2006年5月31日 17:27
- 北嶋孝
コメディア・デラルテは16世紀半ばのイタリアで生まれ、17、18世紀ごろまでヨーロッパで隆盛を極めた、即興性のある仮面喜劇です。プルチネッラは、そのコメディア・デラルテの中でも南イタリアの代表的な召使いのキャラクターとして知られ、鷲鼻の黒い仮面を着けた姿は、パスタを手づかみで頬張る絵や人形劇の登場人物としても親しまれているそうです。今回はイタリア最南端のカラブリア出身のアントニオ・ファーヴァが作・演出・主演・音楽を担当。文化庁の在外研修員として彼に師事した光瀬名瑠子が相手役を演じ、ピアノはクラウディオ・マッティオーリでした。
無機王「僕の腕枕、君の蟹ばさみ。」
- 2006年5月25日 23:55
- 北嶋孝
「僕の腕枕、君の蟹ばさみ。」とは、ヘンなタイトルです。でも見終わって、瞬間的に「分かった」という気持ちになりました。ぶきっちょで優しい男の子と、ひりひりするような尖った女の子の、愛と追憶と再生の物語です。愛は現在から過去を発見する旅として設定されます。旅は追憶という名の探検であり、再生は過去の自分との切ない出会いによって成就します。台本は主人公の女子高生を陰影深く造形し、演出は場面と時間を複合的に配置し、主演の女優は余韻の残る印象的なシーンを刻みました。
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