辻佐保子のアーカイブ
べドラム・シアター「聖ジョーン」
- 2015年2月18日 13:40
- 辻佐保子
◎1+3=1+23
辻佐保子
資料調査のためにマサチューセッツ州ケンブリッジに一週間滞在することが決まった時、真っ先に “Cambridge theater” とキーワードを打ち込んで検索をかけた。当地の演劇事情には明るくないものの、行くからには何かしら演劇作品を見たかった。結局2作品のチケットを予約した。
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TRワルシャワ「4.48サイコシス」
- 2014年12月10日 13:30
- 辻佐保子
◎素材としてのテクスト、揺るがされる観客
辻佐保子
これは演劇のテクスト?
イギリスの劇作家サラ・ケイン作の『4.48サイコシス』(4.48 Psychosis, 1999) には、登場人物がいない。文頭に付されたハイフンによって複数人による対話と読める部分はあっても、対話であるという根拠はどこにもない。幕や場といった区切りもされておらず、明確な起承転結もない。誰のものともつかない断片的な言葉が、意図的に組まれたであろう不規則なインデントで綴られていく。言葉どころか、数字のみが羅列される部分すらある。初めてテクストを読んだ時、上演されることを拒んでいるようだと圧倒されたことを記憶している。『4.48サイコシス』を書き上げた一週間後にケインが命を絶っていることから、演劇のためのテクストというよりも遺書であるとしばしば考えられてきた。それにも関わらず、上演へと引きつける磁力が備わっているのか、『4.48サイコシス』はケイン作品の中でも上演回数が比較的多い部類に入る。本稿では、2014年10月にブルックリンの小劇場セント・アンズ・ウェアハウス (St. Ann’s Warehouse) に招聘されたTRワルシャワによる上演を取り上げる(註1)。
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エヴァ・フォン・シュワインツ「GH ( ) ST」
- 2014年11月12日 13:30
- 辻佐保子
◎未完成な幽霊、不完全な“GHOST”
辻佐保子
マンハッタン中心地での演劇フェスティバル「プレリュード」
マンハッタン島の中心にそびえるエンパイアステート・ビルディングのはす向かいに、ニューヨーク市立大学 (City University of New York) の大学院がある。そこには演劇研究と実践の架橋として機能することを目的としたマーティン・E・セーガル演劇センターがあり、年に一度「プレリュード」 (The Prelude) という小規模な演劇フェスティバルが催されている (註1)。11回目となる2014年は、10月8日から10日までの3日間にわたって開かれた。
「プレリュード」は、ニューヨークを拠点とする若いアーティストの支援を理念として掲げている。『浜辺のアインシュタイン』(Einstein on the Beach, 1978)などで知られる演出家ロバート・ウィルソンの下で長くアシスタントを務めたフランク・ヘンチュカーが製作総指揮に就き、4人のキュレーター(クロエ・バス、ジャッキー・シブリース・ドゥルリー、サラ・ローズ・レナード、そしてアリソン・ライマン)がプログラムを組むというシステムをとる。パフォーマンスやインスタレーションは主に2つの劇場(セーガル劇場とエレバス・リサイタル・ホール)とギャラリー、ミナ・リース図書館といった大学院内の施設で上演・展示された。本稿で取り上げるパフォーマンス『GH ( ) ST』(GH ( ) ST)も図書館を舞台にした出品作品の一つである。
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トラファルガートランスフォームド「リチャード三世」
- 2014年9月10日 13:30
- 辻佐保子
◎Tangled Cord, Strangled York, Mediated Tudor – 1970年代終盤の『リチャード三世』
辻佐保子
演出家ジェイミー・ロイドが芸術監督を務めるトラファルガー・トランスフォームド (Trafalgar Transformed) の第四弾である『リチャード三世』が、ロンドン中心部のトラファルガー広場に程近いトラファルガー・スタジオ1 (Trafalgar Studio 1) で現在上演されている。トラファルガー・トランスフォームドとは、普段劇場に足を運ばない若年層を観客として取り込むという使命を掲げるプロジェクトである。まだ二シーズン目であるものの、映画やテレビで活躍する俳優を主演に迎えたシェイクスピア劇の上演は話題を呼んでいる。昨年のジェームズ・マカヴォイ主演の『マクベス』に引き続き、今年は映画『ホビット』シリーズやBBCドラマ『シャーロック』で知られるマーティン・フリーマンがグロスター公リチャード役に迎えられた。
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ナショナル・シアター・ライヴ「フランケンシュタイン(Aバージョン)
- 2014年4月30日 13:30
- 辻佐保子
◎もたれあう父子に見る人類と科学の姿
辻 佐保子
昨今メトロポリタン・オペラや劇団☆新感線など舞台作品の映画館での上映が頻繁に行われ、ついに英国ナショナル・シアター (以下、NTと略記) 作品の上映も2014年からTOHOシネマズにて開催されることとなった(註1)。ナショナル・シアター・ライヴ日本上映の記念すべき第一作は、2011年にオリヴィエ劇場で上演された『フランケンシュタイン』 (Frankenstein) である(註2)。メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス』(Frankenstein: or the Modern Prometheus, 1818) を下敷きとしているNT版『フランケンシュタイン』はどのような作品であるのか。その特色を端的に挙げると以下の二点となる。
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