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劇評セミナー課題のアーカイブ
TAGTAS「百年の<大逆>-TAGTAS第一宣言より-」(前・後篇二部作)
◎置いてきぼりにされたメロドラマ・ジャンキー 観客の場所はどこ?
都留由子
TAGTASプロジェクトの「百年の<大逆>」前編と後編を観た。TAGTASとはトランス・アヴァンギャルド・シアター・アソシエーションの略で、今回筆者が観た「百年の<大逆>」は、円卓会議、リーディング、映画の上映などとともに、その設立公演のひとつ。一週間の間隔を置いて前編と後編が上演された。
TAGTAS「百年の<大逆>-TAGTAS第一宣言より-」(前・後篇二部作)
◎それが露わにされるとき
大泉尚子
前衛=アバンギャルドという言葉をとんと聞かなくなって久しい。こないだ若い人に暗黒舞踏の説明をしようとして、「前衛的な踊り…」と言いかけて思わず赤面してしまい、あわてて「当時は前衛的と言われた踊り…」と言い直した。何か、口にするだけでもちょっと気恥ずかしい感じがするんだけど、それって私だけでしょうか?
TAGTAS「百年の<大逆>-TAGTAS第一宣言より-」(前・後篇二部作)
◎「観る」とはどういう行為なのか
金塚さくら
舞台は薄暗く、奥までほとんど剥き出しだ。装置と呼べるものは上手に立てられたパネルと、下手に据えられたダンスレッスン用のバーしかない。もうひとつ、簡素な演台が奥に置かれている。
演台の向こうに男が立つ。ヘッドホンを着けカセットテープらしきものをセットし、手元のノートに目を落として論説文のようなものをゆっくりと朗読し始める。「本当のことを話す者にとっては-」
流山児★事務所「ユーリンタウン-URINETOWN The Musical」
◎もっと匂いを!
大泉尚子
座・高円寺の入口あたりから会場内にかけて、警官の扮装をした男女が10人以上。彼らは、客入れや会場案内をやっている。手には警棒、全身黒ずくめ。女は、ショートパンツ・網タイツにピンヒール、ジャケットの胸元のボタンを最大限にあけて、豊かな谷間を強調しつつ。これはきっと、異色のブロードウェイミュージカル「ユーリンタウン」の世界へのエロこわい誘導なのね、と思う。
流山児★事務所「ユーリンタウン-URINETOWN The Musical」
◎鏡に映る苦い自画像 「水洗」の枠を超えて
都留由子
オフ・ブロードウェイよりもっと小さな劇場(フリンジと言うらしい)で大好評を得て、ブロードウェイでの上演に至り、2002年のトニー賞まで取ってしまったというミュージカル「ユーリンタウン」を観た。流山児祥の演出である。
流山児★事務所「ユーリンタウン-URINETOWN The Musical」
◎猥雑だけど洗練、「遊び心」も みる人を変える力持つ
小林由利子
6月13日(土)の夜の部に『ユーリンタウン』を見に行くと、劇場の前は何やら怪しい人たちでごったがえしていた。子どもの頃白黒テレビで見た石器時代の毛皮を着ている人がうろうろしたり、コスプレなのかダンサーなのか不明な女性が一心不乱に踊っていたり、仮面をつけた人が一人芝居をしていたり、何だろうと不思議に感じた。入口がわからず、うろうろしていると、「こっち!」と黒いホットパンツ、谷間胸あけへそ出し、黒い制帽、赤いシンボルの入った、昔にナチスの映画のキャバレー場面で出てきたような娼婦風警官と思しき人に声をかけられた。舞台では、大音響で狂ったように阿波踊りをしている人たちがいて、その間を縫って、もう一人女性警官が待ち受け、その先にもう一人いて、「ここよ!」と席を指し示され、やっと上部にある自分の席に辿りつくことができた。
「化粧 二幕」と「楽屋」
◎家族の解体から新しい人間関係へ 女優と楽屋をモチーフに
鈴木厚人(劇団印象-indian elephant-主宰、脚本家、演出家)
座・高円寺のこけら落とし公演「化粧」と、シアタートラムのシスカンパニー公演「楽屋」が、ほぼ同じ時期に上演されていたのは、僕にとっては嬉しい偶然だった。どちらも“楽屋”が舞台で、“女優”をモチーフにした芝居であり、チラシも“化粧”をしている女優の写真。しかも、名作と呼ばれている戯曲の何度目かの再演(「化粧」の初演は1982年、「楽屋」の初演は1977年)と、共通点の枚挙に暇がない。もちろん、「化粧」は一人芝居であり、「楽屋」は女優四人の芝居だから、そこのところは大きく違う。ストーリーだって全然違う。観劇後の僕の満足度(つまり、僕が感じた芝居の出来)だって、180度違った。しかし、その違いをつぶさに見比べると、太いつながりを感じずにはいられなかった。
「化粧 二幕」
◎舞台こそが化粧
金塚さくら
埃だらけで薄汚れた楽屋の、そこだけが聖域か何かのように白い布で覆われている。ちゃぶ台より少し大きいくらいの、平机。起き上がった女座長は威勢よく座員に檄を飛ばし、かと思うとぶつぶつ何やらひとりごちる。夏の夕暮れ、あと一時間もしないうちに舞台の幕が開く。
「化粧 二幕」
◎二人の女優と一人の女 または彼女たちは如何にして心配するのをやめ劇場を愛するようになったか
島田健司
座・高円寺のオープニングで600回の上演を迎える渡辺美佐子の一人芝居『化粧』。再演という上演形式の定着に恵まれず、大量に作られては消費され、また作られては消費される奔流のような日本の演劇状況において、1982年の初演から27年の歳月をかけて打ち立てられたこの記録は継続することが可能にする演劇的醸成とはいかなるものかを僕たちに示している。
「化粧 二幕」
◎「劇」を動かしているものは何か 「母性」が観客と出会うとき
坂本俊輔
『化粧 二幕』の公演を見終えた後、ワンダーランドのセミナーの一環として、主演の渡辺美佐子さんと舞台監督の田中伸幸さんから直接話を伺う機会が得られた。海外公演での観客の反応、「ゴキブリ」のくだりが生まれるきっかけとなった地方公演のエピソード、渡辺さんの演技に対する姿勢など様々な話を聞くことができ、舞台とは異なる面から劇を理解する上でも大変参考になった。気がついたのは、お二人の話には観客との距離に関係したものが多く、すし詰めの観客を間近にして行われた下北沢のザ・スズナリ劇場での初演を、渡辺さんはとても感激した、と感慨深く語っていたことや、逆に1000人を超えるような地方の大ホールで公演を行った際は、舞台を客席に近づけるよう田中さんが苦心された話など、観客との「近さ」にこだわりをもっていることが感じられた。
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