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新国立劇場「ダンス・アーカイヴ in JAPAN 2015」
- 2015年3月25日 13:55
- 原田広美
◎ありきたりのダンスなんて、どこにもなかった
原田広美
「一般社団法人 現代舞踊協会」の制作協力を得て、3月7~8日に、新国立劇場が「ダンス・アーカイヴ in JAPAN 2015」を中劇場で開催した。昨年6月に、大きな反響を得た「ダンス・アーカイヴ in JAPAN」の続編で、日本の洋舞100年の歴史を蘇らせることを意図した催しである。ところで、「現代舞踊協会」の英語表記は「CDAJ(=コンテンポラリ-・ダンス・アソシエ-ション・ジャパン)」。前回に次いで今回も、やはり「現代舞踊は、その時々のコンテンポラリ-なダンスであった」ことを実感した。このたび再演したのは、石井漠(1886~1962)、執行正俊(1908~1989)、檜健次(1908~1983)、江口隆哉(1900~1977)、石井みどり(1913~2008)の作品である。
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《観劇体験を深める》ワールド・カフェ
◎観劇体験を深めるワールド・カフェのススメ
平松隆之・白川陽一
●演劇の感想を語り合う場をつくる-ワールド・カフェとの出会い(平松隆之)
2012年10月、静岡県舞台芸術センター(SPAC)で「静岡から社会と芸術を考える合宿ワークショップ」という2泊3日のワークショップを開催しました。私としらさん(白川陽一)はこれに、外部のファシリテーター(=ワークショップの進行・かじ取り役)として関わりました。合宿プログラムでは、初日の始めに観劇が予定されており、事前のSPACの方たちとの打ち合わせで、参加者同士で感想を語り合う機会を是非設けたい、ということになりました。
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観客のあいだで考えつづけるということ
―「ワンダーランド」休止によせての覚書き
- 2015年3月25日 13:40
- 堀切克洋
堀切克洋
1.「面白い/面白くない」の二分法を超えて
劇評は誰のために書くのか? 公演初日に書かれたものであれば、千秋楽までに劇場に足を運ぶ観客のための指針ともなるだろうが、大抵の場合は劇評を読んだ時点でその公演はすでに千秋楽を迎えている。では、読者が活字を通じてその未見の舞台を「追体験」することが目的かというと、必ずしもそういうわけではない。むしろ、読者が追体験するのは、書き手が「頭の中で考えたこと」のほうだろう。
だから結局のところ、公演自体がいかに面白かったとしても、書き手が面白くなければ劇評はつまらないものになる。いかに素晴らしい食材を仕入れようとも、シェフが三流であれば、できあがる料理の質はたかが知れたものとなるのと同じことだ。
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連載企画 観客が発見する 第4回(座談会)
◎観客の世界を開く
澤田悦子・田中瑠美子・黒田可菜・廣澤梓(発言順)
―ワンダーランドのとりあえず最後の企画は、観客から見た演劇を明らかにしたい、という狙いがあります。今回、芝居に関心がある人で、話していただけそうな人を選んだら、たまたま女子会になった(笑)。みなさんはワンダーランドの「劇評を書くセミナー」に参加しています。顔見知りだとは思いますが、あらためて演劇に関心を寄せているわけ、何が劇場に向かわせているのか、ご自身と演劇の関わりについてお話いただくところから始めたいと思います。
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SPAC「グスコーブドリの伝記」
- 2015年2月25日 13:57
- 廣澤 梓
◎さまよう目がたどりつく「グスコーブドリ」
廣澤梓
その上演は遠く、焦点が定まらずに目がふらふらして輪郭がぼやける。つまりは、よく「見えない」。視界を遮るものはなかったし、見るのに遠すぎたわけでもない。SPAC『グスコーブドリの伝記』を鑑賞したのちに残ったこの感覚は、観劇において見えるということがどういうことなのかを教えてくれる。見ることとは、はっきりと近くに全体を通して、ということだ。近くに、というのは物理的な距離だけでなく、心理的な隔たりでもある。また見えなさは目に宿る、見たいという欲望にも気づかせてくれる。満たされることなくさまよい続ける目は、わたしを「考え続ける」ことへと導く。
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チェルフィッチュ「スーパープレミアムソフトWバニラリッチ」
- 2015年1月28日 13:40
- 廣澤 梓
◎うすっぺらいかもしれないわたしたちの、ささやかな抵抗
廣澤梓
職場から90分ほどかけて帰ってきた最寄駅の、改札を出てすぐ右手に見えるコンビニに寄ると、おじさん3人が今日も働いている。若者バイトの入れ替わりが激しいのに対して、彼らはもう5年以上はいる。ひとりは必要のない割り箸やプラスティックのスプーンを、手当たり次第レジ袋に突っ込んでくる。ひとりは昨夏になって急に、客がレジに持ってきた商品に対してコメントをするようになった。もうひとりはうっとりする美声で、その接客、商品を扱う手つきに気品すら感じる。
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劇団民藝「コラボレーション—R・シュトラウスとS・ツヴァイク—」
- 2014年11月12日 13:30
- 鉢村優
◎ただ、これだけが言いたくて
鉢村優
盟友の劇作家ホフマンスタールを亡くして以来、ドイツの作曲家リヒャルト・シュトラウス(西川明)は魅力的な台本を渇望していた。楽想を引き出す呼び水が無ければオペラが書けない、とぼやく彼を妻のパウリーネ(戸谷友)は叱咤し、オーストリアの人気作家シュテファン・ツヴァイク(吉岡扶敏)に勇気を出して連絡するようけしかける。
後日、ツヴァイクがシュトラウスの邸宅にやってくる。求めに応じて、オペラの台本を書こうというのだ。シュトラウスはツヴァイクを歓待し、「音楽的なアイディアが頭の中に渦巻いているのに、それを出すことができなくて苦しい。早くプロットをくれ」と懇願する。その剣幕にツヴァイクは戸惑い、焦るシュトラウスと押し問答を繰り返す。ついに二人は「無口で控えめだった女が、結婚した途端口うるさい女房に変わる」という喜劇を作ることにする。このオペラはホフマンスタールと作ってきた数々の名作を超えるコラボレーションになるだろう、と言ってシュトラウスは有頂天になる。
しかし、ツヴァイクはユダヤ系であった。着実に勢力を増しつつあったナチスの迫害は、二人のオペラにも影を落とし始める。上演中止の圧力を辛くも振りきり、初演は大成功を収めるが、ツヴァイクの身には危険が迫っていた。彼はオーストリアから亡命する。一方、シュトラウスの息子の妻もユダヤ系であった。嫁と孫たちを迫害から守るには、政権が押し付けた第三帝国音楽局総裁の任を引き受けねばならない。
シュトラウスはツヴァイクに秘密裏での共同制作を再三提案するが、ツヴァイクが応じることはなかった。イギリスへ、ブラジルへと移住を繰り返したツヴァイクは、1942年、サンパウロで妻とともに自ら命を絶つ。戦後、年老いたシュトラウスは非ナチ化裁判に出席する。やむをえないナチスへの協力、再び訪れることのなかったツヴァイクとの共同作業を嘆いてシュトラウスは、あなたならどうしたと言うのか、と客席に向かって問いかけるのだった—
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マームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと———-」
◎食卓は待っているか?
(座談会)林カヲル+藤倉秀彦+麦野雪+大泉尚子
「わかりやすさ」をめぐって
藤倉秀彦:6月に上演されたマームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと———-」。本題に入る前に、この作品の大まかなアウトラインを説明します。舞台は海辺の小さな町で、中心となる登場人物は、長女、長男、次女の三人。ある夏、長女と次女がそれぞれの娘を連れ、長男がひとり暮らす実家を訪れる。集まったひとびとは卓袱台をかこみ、食事をするわけですが、三人きょうだいの思い出の場であるその家は、区画整理によって取り壊されることが決まっているんですね。 続きを読む
トヨタ コレオグラフィーアワード2014
- 2014年8月27日 13:30
- 鉢村優
◎明らかにされない判断基準、今後が期待される顕彰事業
鉢村優
トヨタ自動車と世田谷パブリックシアターの提携事業として2001年に創設されたトヨタ コレオグラフィーアワード。一般公募の中から選ばれた6名(組)の振付家がファイナリストとして作品を上演し、“ネクステージ”(最終審査会)で「次代を担う振付家賞」の授与者を決定する。本アワードは、トヨタ自動車の公式サイトによれば、「ジャンルやキャリアを超えたオリジナリティ溢れる次代のダンス」を対象とし、振付家の成長を支援する目的で実施されている。9回目の開催となる本年は以下の6組がネクステージに選出された。
捩子ぴじん 「no title」
スズキ拓朗「〒〒〒〒〒〒〒〒〒〒」
木村玲奈「どこかで生まれて、どこかで暮らす。」
塚原悠也「訓練されていない素人のための振付けのコンセプト001/重さと動きについての習作」
川村美紀子「インナーマミー」
乗松薫「膜」
以下、上演順に各作品について整理していく。
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東京デスロック「CEREMONY」
- 2014年8月20日 13:30
- 廣澤 梓
◎見る/見られるをめぐるダンスフロアー
廣澤梓
「観客という集合体を構成する個人は、それぞれ社会から〈離れて〉劇場に〈出かけ〉ていくが、劇場では一個人としてではなく集団として反応することで、社会の役を演じることになる。」 —リチャード・シェクナー「儀礼のゆくえ」『パフォーマンス研究—演劇と文化人類学が出会うところ』
劇場に入ると床には、マゼンダとシアンの影が左右にブレて落ちている。立体視のできるメガネをかけているかのような視界と、天井で回るミラーボールが遠近感を狂わせる。冷静でいようとしてかえってやってきた緊張を解きほぐそうと、わたしは開場時間のBGMとしては大きすぎる音楽に身体を揺らした。
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