忘れられない一冊、伝えたい一冊 第32回

◎「後宮小説」(酒見賢一著、新潮社)
 玉山悟

【「後宮小説」表紙・玉山さん蔵書】
【「後宮小説」表紙・玉山さん蔵書】

 「忘れられない一冊」という企画ですが、私は演劇の本はあまり読んでなくて、読んでも全部忘れてしまうので、「忘れられない一冊」って実はないんですよね(笑)。私の「忘れられない一冊」は酒見賢一のデビュー作「後宮小説」です。酒見賢一は好きですね。全作品初版で持ってるんじゃないかな。「後宮小説」に至っては、3冊持っているんです。最初に手に入れた単行本が6刷りで、初版が欲しくて古本屋を6年も探してようやく手に入れました。それに文庫本。合わせて3冊持ってます。

 酒見賢一の好きなところは、非常に博識なところと、文章が格調高くて美しいところ、作品の設定の面白さですかね。ただ、すごく寡作な作家なので、新作を待っている読者は読むものがなくて。単行本を持っているのに、文庫本あとがきが読みたくて文庫本も買ってしまうみたいなところがあります(笑)。
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【レクチャー三昧】2013年11月

 今月はフェスティバル/トーキョーとの兼ね合いで多忙をきわめる時期でございます。私事ですが、去年フェスティバル/トーキョーのパスポートを買ってせっせと通っていたら、終盤になってぎっくり腰になってしまいました。年齢のせいにしたくはなし、強靱な身体(と精神力)が欲しいです。(高橋楓)
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【レクチャー三昧】2013年9月

 ついに秋がやって参りました。10月開催の講座は【レクチャー三昧】カレンダー版に載せてございます。10月スタートでも申込締切が9月中の講座もございますのでご留意下さい。
(高橋楓)
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岡崎藝術座「(飲めない人のための)ブラックコーヒー」

◎時代を切り取る装置に出会う快感
高橋 英之

「ブラックコーヒー」公演チラシ
「ブラックコーヒー」公演チラシ

 結局、3回も観てしまった。おそらく、人生で初めてのことだ。再演を観るのではなく、初演の作品を、こんなに何度も観るのは。しかも、わざわざ京都まで追っかけての3回目の観劇のあとも、いまだにこの作品が切り込んできたテーマについて、あれこれと思いを巡らせることになってしまっている。岡崎藝術座『(飲めない人のための)ブラックコーヒー』の作品の強度は、それほどまでに、衝撃的であった。
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【レクチャー三昧】2013年8月

8月は大学は「夏期休暇」(一応、とは教員の知り合い曰くですが)ですので、イヴェントの数は多くありません。新たに情報を入手しましたら【レクチャー三昧】カレンダー版に入力致します。猛暑の折、皆さまご自愛下さいませ。
(高橋楓)
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【レクチャー三昧】2013年6月

 劇評講座三本を、ここにご紹介出来ることをうれしく思います。十年ひと昔前、芝居のアンケートにもっとまともなことを書きたくなって劇評講座をあちこちのカルチャースクールで探し回ったものの、殆ど見つからなかったことを思い出します。そもそも演劇関連の講座が絶対的に少なく、日本の現代演劇が語られる講座に至っては皆無に等しかったのです。独りで芝居を観続けており、カルチャーセンターしか思いつかなかったのがいけなかったのかもしれませんが。
 なお、国際演劇評論家協会日本センター/シアターアーツ主催の劇評家講座については、開始日を見落としたまま掲載しそびれており、失礼致しました。今年度より各回1,000円で参加出来るということです。
(高橋楓)
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新国立劇場「効率学のススメ」

◎「効率化」は治癒すべき「がん」であるのか?
  高橋英之

 「改善するためには、測らなければならない」
 トヨタ自動車の製造現場のカイゼン活動で、前人未到の10回の社長表彰を受けたビジネスの世界の大先輩のこの言葉は、いまや、工場に限らず、日常生活にまで浸透している。牛丼チェーンのカウンターに座れば、ものの数十秒で注文した食事が供される。このプロセスは、丼をどの手で取り、だし汁をすくいかける動作まで何秒かかり、カウンターに運ぶまで何歩かかるかが測定され、進化を遂げた成果である。いまではあたり前になった駅の自動改札では、電子カードと検知器の距離、さらには検知器の角度までをも微妙に変化させ、どのくらいのスピードで人が通過できるのかを測定し、効率化が図られたという開発努力がある。測定し、改善し、効率化し、もって充実した生活に貢献する。これは、常に進歩し拡大してゆきたいという人間としての欲望を忠実に反映した、いわば現代の基本原理といってよい。新国立劇場が、<With つながる演劇>と銘打ったシリーズの第1弾として、ウェールズから新進気鋭の劇作家アラン・ハリスと演出家ジョン・E・マグラーを招いて、舞台に上げた作品『効率学のススメ』は、この現代の基本原理に、亀裂を入れようとするものだった。
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【レクチャー三昧】2013年5月

 今年は没後30年ということで、寺山修司関連の催しが沢山ございます。私事ですが若い頃は「アングラ演劇」がいっとう好きで、なかんずく寺山修司に惹かれておりました。寺山修司は「アングラ」に入れないという考えかたは最近になってから知りました。とまれ青春期(?)に魅入られてしまったものからは終生離れ難い、のかも、しれません。
(高橋楓)
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