キジムナーフェスタ2011[報告]

◎子どもたちの力になるお芝居
 都留由子

キジムナーフェスタ2011公演チラシ 「キジムナー」は、沖縄の妖怪で、木の精、特にガジュマルの木の精である。川で元気に遊ぶ子どもを河童になぞらえるように、沖縄ではキジムナーは元気な子どものイメージなのだそうだ。
 そのキジムナーの名前を冠した「キジムナーフェスタ」は、「国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ」の愛称である。今年2011年のフェスティバルは7月の終わりの9日間。メキシコ、ジンバブエ、スペイン、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、フランス、イタリア、韓国、オーストラリアなど14カ国の51作品が上演され、ステージ数は170、そのほかにも国際シンポジウム、ワークショップ、講演会、セミナー、などが多数開催された。公式HPによれば観客数は31,000人を超え、また、参加したゲスト、キャスト、スタッフは海外、国内、県内を含め500人にのぼったそうだ。9日間で31,000人ということは単純に計算すると3,400人の会場を毎日いっぱいにしていることになる。3,400席。渋谷のNHKホールの客席数だ。
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【レクチャー三昧】2011年8月

 7月は個人的な事情で休載してしまい申し訳ございませんでした。
 今年、大学の夏休みは、東日本大震災の影響により変則的なところがあるのですが、毎年秋期はどこもレクチャー花盛りになります。見つけ次第【レクチャー三昧】カレンダー版に入力していきますのでお楽しみに。土曜の午後は空けておかれることをお勧め致します。
(高橋楓)
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世田谷パブリックシアター「モリー・スウィーニー」

◎端正に、人懐こく、予想外の仕掛けで形に
 徳永京子

「モリー・スウィーニー」公演チラシ 世田谷パブリックシアターという大きな劇場を使いこなせるつくり手を、劇場自らの手で発掘・育成しようという世田パブの取り組みは、同じ08年に「ネクスト・ジェネレーション」と「日本語を読む」の2つの企画をスタートさせたことで、地道ではあるが大きな歩みをスタートさせた。脚本の完成度を主な選考基準とし、若手の団体を対象とする「ネクスト・ジェネレーション」。前者の卒業生、あるいはそれに近い活動年数を持つ演出家に、劇場サイドが指定した戯曲で演出手腕を奮ってもらうリーディング「日本語を読む」。この2本で、若手と準若手、劇作力と演出力のいずれをもカバーできるからだ。
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Ort-d.d「女中とアラスカ-不条理劇二本立て公演-」/ジャン・ジュネ「女中たち」

◎女中たちの自壊する嘘の世界に、大山金太郎の幻を見た
 高橋 英之

 舞台を見ながら、奇妙なシンクロをしてしまった。こともあろうに、あの大山金太郎と。そう、『熱海殺人事件』(作:つかこうへい)のあの犯人役と。

 大山金太郎「なしてね、おいが職工じゃからね」
 ソランジュ「わたくしは女中です」

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勅使川原三郎公演 「サブロ・フラグメンツ」

◎光のストライプに未来を託す
 田中伸子

勅使川原三郎ダンス公演「サブロ・フラグメンツ」チラシ ゴールデンウィーク中に川崎市アートセンター、アルテリオ小劇場で開催された勅使川原三郎ダンス公演「サブロ・フラグメンツ」は何とも贅沢、豊かで濃密な時間を提供してくれるアート体験であった。

 過去、四半世紀に渡り日本、さらには世界のコンテンポラリーダンス界を牽引し続けてきた勅使川原三郎による最新作「サブロ・フラグメンツ」。1988年に横浜、旧三菱倉庫で同名作品を発表しているので、再演ということにはなるのであろうが、その点に関して、本人は当日配布のパンフレットの冒頭でこのように語っている。
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【レクチャー三昧】(2011年5月)

◎何のために学んできたのか

 今まで、こんなに沢山の舞台を観いろんなレクチャーを受けてきたというのに、わたしは何ひとつ、想像力を養うことも知覚を拡げることも思考を深めることもしてこなかったのではないか、と、あの未曾有の事態に直面して思いました。でも生きている限り絶望はしますまい。
【レクチャー三昧】、続けてゆきます。引き続きご贔屓のほど、よろしくお願い申し上げます。(高橋楓)
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高嶺格「Melody Cup」

◎民主主義的演出へのアンビバレンス
 竹重伸一(舞踊批評)

 最前列の客席より一段窪んだ所一面に、四面を板で囲まれてブルーシートが敷かれている。奥の壁には白いスクリーン。スクリーンと舞台後方の板の間の通路もパフォーマンス空間である。この1時間45分の作品のラスト、舞台前面の板の前に一列に並んだ12人のパフォーマー全員でビージーズの「メロディ・フェア」を歌うのを聴いている内に舞台作品としては久し振りに幸福な感情に襲われたが、一方で作品全体からは拭い難い違和感を感じる部分も私の中にあることは否定できない。その辺りの感情の曲って来る所を考えてみようと思う。
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【レクチャー三昧】何のために学ぶのか

 学び続けるのは、直面した事態に対するリテラシーを養い、相対化する態度を身につけるためです。2011年3月11日、この日に起きたこととそれから起きていることの当事者のひとりとして、わたしにはそれが初めて分かりました。
 大学で開催される無料講座は、新学期に入ってから告示されるものが多そうです。【レクチャー三昧】カレンダー版を更新していきますので、適宜ご覧下さい。
(高橋楓)
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カンパニーデラシネラ「あらかじめ」(TOKYO DANCE TODAY #6)

◎イメージの連鎖で紡ぐ、俯瞰と詳細で描いた夢のおはなし
 田中伸子

「あらかじめ」公演チラシ 週の終わりに東京を襲った突然の大震災から数日を経て、東京でも少しずつ平常を取り戻しつつあったとは言え、電力供給不足による節電奨励でおしゃれな都会スポットとして見慣れたはずの青山界隈からは軒並み明かりが消え、いつもは華やかな青山通りも静寂と宵の闇に包まれていた。
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