枝光本町商店街アイアンシアター

◎誰もがアーティスト
 前田瑠佳

 福岡県北九州市八幡東区枝光本町にある民間劇場「枝光本町商店街アイアンシアター」。この劇場がある地域は新日鉄八幡製鉄所のお膝元として発展し、そして企業の撤退によって衰退していったところである。また、北九州市の中でも最も高齢化が進んでいるといった特徴があるという地域だ。そんな場所で地域のにぎわいを取り戻そうと、空きビルを劇場として再活用してできたのが「枝光本町商店街アイアンシアター」である。この劇場では、劇場としてスタートを切った2009年から秋から冬にかけて「えだみつ演劇フェスティバル」が開催されている。
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shelf 「班女/弱法師」

◎「なるほど」がある演出
 水牛健太郎

公演チラシ
「班女/弱法師」公演チラシ

 三島由紀夫は言わずと知れた大作家だが、演劇にも大変な情熱を注いだ人だ。自己演出に凝ったり人をかついだりと、存在自体演劇的だったし、書いた戯曲の数も小説に匹敵するぐらいあった。ひょっとして演劇の方が小説より好きだったんじゃ、と思うほどにもかかわらず、「そもそも三島の戯曲ってどうよ?」とか言われてしまうのは、天才にして思うに任せないもんだ世の中は、ねえ三島君、と急になれなれしく呼びかけてみる。
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忘れられない一冊、伝えたい一冊 第25回

◎「ナポレオン」(作者/出版社不明)
  益山貴司

 小学校の図書館で、人気があるのは当然漫画で、「はだしのゲン」は必読のベストセラーだったし、手塚治虫の「陽だまりの樹」は、おっぱいぽろりがあって人気があった。「ズッコケ三人組」シリーズもみんな読んでたし、「ぼくらの七日間戦争」ではじまるぼくらシリーズは、本格的に流行ったのは中学校からで、この頃は一部の女子しか読んでいなかった。
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小西耕一ひとり芝居「既成事実」

◎俳優の仕事-虚構と現実をむすぶ鍵-
  宮本起代子

「既成事実」公演チラシ
「既成事実」公演チラシ

【俳優小西耕一のこと-荒野に立つ四男-】
 小西耕一の出演した舞台は、2010年春elePHANTMoon(以下エレファント)公演『ORGAN/ドナー編』(マキタカズオミ脚本・演出)や、2011年秋同じくエレファント公演『業に向かって唾を吐く』などをみている。いずれも物語の脇筋や副筋に位置し、堅実で的確な演技をする俳優という印象をもった。
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ロロ「ミーツ」

◎未完の成熟
 水牛健太郎

 ロロの作品を決して多く見てきたわけではないが、今回の作品「ミーツ」は画期になったのではないかと感じた。その大きな理由の一つは、この作品の中に「成長」のテーマが繰り返し現れてくるからだろう。これまでのロロの作品はむしろ少年期の感性のみずみずしさを強調するものだったため、大きな変化と感じられるのだと思う。
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範宙遊泳「さよなら日本 瞑想のまま眠りたい」

◎忘れられたものの回帰と日本の終わり
  水牛健太郎

「さよなら日本」公演チラシ
「さよなら日本」公演チラシ

 範宙遊泳は以前短めの作品も含めて3本(「労働です」「うさ子のいえ」「ガニメデからの刺客」)見たが、今回、作風が変化していて驚いた。しかし考えてみれば1年以上間を空けているので、これほど若い作り手であれば大きく変わっても全然不思議ではないのかもしれない。以前見たときの印象は、劇中で物語の進行にルールを課したり、ゲームの要素を盛り込んだりすることで、軽やかな感じを出しているということだった。だが、それほど面白いとは思わなかった。
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カトリ企画UR「紙風船文様」

◎3人によるクロスレビュー

 今回の企画は、アトリエセンティオで2013年4月4-7日に上演されたカトリ企画UR「紙風船文様」を同時に観劇した3人の方のお申し出により、それぞれの視点から批評していただいたものです。3人は昨年フェスティバル・トーキョー(通称F/T)の関連企画「Blog Camp in F/T」で知り合い、F/T終了後も不定期に集まっては、各々が観た作品を話し、議論してきたとのことです。
 それぞれ違うバックグラウンドを持つ評者が一つの作品に関して書く事で、「紙風船文様」という作品の様々な側面が浮かび上がってきたことと思います。(編集部)
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想田和弘監督「演劇1」「演劇2」

◎平田オリザの孤独と冒険
  水牛健太郎

映画「演劇1」「演劇2」のチラシ
映画「演劇1」「演劇2」のチラシ

 「演劇1」が始まって間もなく、平田オリザがホワイトボードに「イメージの共有」という言葉を書く場面があるのだが、私の記憶が確かなら、「メ」の字を書くときに平田はいきなり短い棒から書いて、私を驚かせた。続いて「共」では、上の横棒を書いてから縦棒を二本書くのが正しい書き順だが、平田は縦二本を先に書いたのだったか、横二本を続けて書いたのだったか。「有」の字は一番上の横棒を最初に書いて、本来最初に書くはずのはらいを次に書いた。
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バナナ学園純情乙女組「-THE FINAL-バナナ学園大大大大大卒業式 〜サヨナラ♥バナナ〜」

◎「ありがとうバナナ」と叫びたい
  水牛健太郎

バナナ学園純情乙女組公演チラシ

 「伝説」という言葉があって、もともと自然にできるものだった、と思う。自然、と言ってもしょせんは人の世のものだから、人為的に作られることもしばしばだったが、それはあくまで暗いところで語られる裏話。声高に「自分が伝説を作っている」と言い募る性格のものでなかった。
 それがいつの間にか、伝説はおおっぴらに作るものになった。事前に「伝説になる」とうたってるイベントなど、むしろありきたり。参加者や観客の方でも「伝説」のできるその瞬間を見届けようと、意気揚々とその場にやってくる。
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マームとジプシー「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」
はえぎわ「ライフスタイル体操第一」
モナカ興業「旅程」

◎MITAKA “Next”Selection の今~星のホール攻略法のあの手この手
 三橋暁

1、カンパニーに優しい公共劇場~〈MITAKA “Next” Selection〉の沿革

MITAKA “Next” Selection 13th チラシ
MITAKA “Next” Selection 13 の公演チラシ

 その年ごとに多少の開催時期のズレはあるようだけど、三鷹の秋の風物詩としてすっかり定着した観のある〈MITAKA “Next” Selection〉が、昨年も開催された。地元ゆかりの文豪に因んだ〈太宰治をモチーフにした演劇〉とともに、三鷹市芸術文化センター星のホール(以下、星のホール)の二大看板として評判を呼んでいる名物企画だ。
 この星のホールが、1995年11月の施設オープン以来、さまざまな公演を重ねながら、小劇場との蜜月の関係を築いてきたことは、多くの演劇ファンがご存じだろう。当時まだあまり例のなかった、公共ホールが劇団を招請し、ひと公演まるごとを主催・共催事業として実施するという事業形態に積極的に取り組んできた過去の経緯は、ホールの運営にあたる財団職員、森元隆樹氏へのインタビュー(ワンダーランド「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から第10回」)に詳しいので、興味のある方は本誌HPのアーカイブをぜひご覧いただきたいと思う。
“マームとジプシー「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」
はえぎわ「ライフスタイル体操第一」
モナカ興業「旅程」” の
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