風琴工房「砂漠の音階」

 風琴工房の「砂漠の音階」公演が東京・下北沢のザ・スズナリで開かれました(4月5日-12日)。昨年の「機械と音楽」公演(2005年3月)は「革命後のロシアで『新しい社会・新しい芸術』に挑み続けたアヴァンギャルドの建築家に … “風琴工房「砂漠の音階」” の続きを読む

 風琴工房の「砂漠の音階」公演が東京・下北沢のザ・スズナリで開かれました(4月5日-12日)。昨年の「機械と音楽」公演(2005年3月)は「革命後のロシアで『新しい社会・新しい芸術』に挑み続けたアヴァンギャルドの建築家にスポットを当てた」作品だったそうです。その過程で「政治がもたらした社会と個人のあいだの軋轢ではなく、革命という青春の時代を生きた芸術家たちの原初的な魅力に満ちたその創造の物語」に胸打たれ、作者の詩森ろばさんは「芸術の持つ、ゼロからなにかを生み出すエネルギー」が「やはりたったひとつの逞しい希望であることをわたしは身を持って知った」(企画書より「機械から砂漠、音楽から音階へ」)と言います。これが最新作のモチーフなのでしょう。例えば、次のような受け止め方に、舞台の手応えが表れているのかもしれません。

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ドイツ座「エミーリア・ガロッティ」

 ドイツ座「エミーリア・ガロッティ」公演は、演出・演技、舞台装置・美術、照明、音楽などが溶け合って見事な舞台空間を造形しました。封建的な貞節観念と父性の相克、王侯貴族と興隆する市民階級の軋轢を扱った歴史劇は、男女の愛憎が … “ドイツ座「エミーリア・ガロッティ」” の続きを読む

 ドイツ座「エミーリア・ガロッティ」公演は、演出・演技、舞台装置・美術、照明、音楽などが溶け合って見事な舞台空間を造形しました。封建的な貞節観念と父性の相克、王侯貴族と興隆する市民階級の軋轢を扱った歴史劇は、男女の愛憎が絡み合う光と影の現代ドラマに姿を変え、私たちの胸をかきむしります。「堪能」という表現がぴったりの、味わい深い舞台でした(彩の国さいたま芸術劇場、3月19日-21日)。

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「ベラージオ」と「セックスハビッツ・オブ・アメリカンウィメン」 アメリカ現代戯曲&劇作家シリーズVol.1(下)

 東京芸術祭「アメリカ現代戯曲&劇作家シリーズVol.1 ドラマリーディング」リポートの後編は、「ベラージオ」と「セックスハビッツ・オブ・アメリカンウィメン」を取り上げました。またもや長々と書きましたが、お付き合いくださ … “「ベラージオ」と「セックスハビッツ・オブ・アメリカンウィメン」 アメリカ現代戯曲&劇作家シリーズVol.1(下)” の続きを読む

 東京芸術祭「アメリカ現代戯曲&劇作家シリーズVol.1 ドラマリーディング」リポートの後編は、「ベラージオ」と「セックスハビッツ・オブ・アメリカンウィメン」を取り上げました。またもや長々と書きましたが、お付き合いください。

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「メイヘム」と「アクト・ア・レディ」 アメリカ現代戯曲&劇作家シリーズVol.1 ドラマリーディング(上)

 これまで中東と東欧の舞台を精力的に紹介してきた東京国際芸術祭(TIF)が今年から、現代アメリカの作品を取り上げました。3年間継続のプログラムです。ヨーロッパやアジアのパフォーマンス・アートは日本でよくみられるようになり … “「メイヘム」と「アクト・ア・レディ」 アメリカ現代戯曲&劇作家シリーズVol.1 ドラマリーディング(上)” の続きを読む

 これまで中東と東欧の舞台を精力的に紹介してきた東京国際芸術祭(TIF)が今年から、現代アメリカの作品を取り上げました。3年間継続のプログラムです。ヨーロッパやアジアのパフォーマンス・アートは日本でよくみられるようになりましたが、演劇を通してアメリカの「いま」に接する機会は意外に多くありません。「アメリカ現代戯曲&劇作家シリーズ/ドラマリーディング」と題して、今年はとりあえず4作品が紹介されました。やっとというべきか、いよいよというべきか、時宜にかなったTIFらしい企画ではないでしょうか。リーディング形式での紹介ですが、いわゆる小劇場系の演出家も起用して、ひと味違った「上演」に仕立てる趣向だったようです。

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人形劇団プーク「現代版・イソップ『約束…』」

 あーあ、おもしろかった。おもしろすぎて、涙が出てくるほど笑い転げてしまいました。風刺の効いたストーリー、卓抜な人形造形、熟達の演技と演出-。こまばアゴラ劇場が主催する「冬のサミット2005」に、昨年に続いて登場した人形 … “人形劇団プーク「現代版・イソップ『約束…』」” の続きを読む

 あーあ、おもしろかった。おもしろすぎて、涙が出てくるほど笑い転げてしまいました。風刺の効いたストーリー、卓抜な人形造形、熟達の演技と演出-。こまばアゴラ劇場が主催する「冬のサミット2005」に、昨年に続いて登場した人形劇団プークは、内外の公演で鍛えた技法をさりげなく駆使して、楽しくも切ないお話を届けてくれました。この人形劇団を選んだプログラムもすばらしいのですが、その機縁を倍にしておつりが出るほどの舞台をみせたプークにはおそれいりました。恐るべし、人形劇団プーク。

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三条会「アトリエ杮落とし公演 2005年日本近代らりぱっぱ4部作」、そして『メディア』へ

◎月に跨り千葉通い

三条会が千葉市にアトリエを構えたらしい。そんな噂を耳にしたのは2005年の春である。1997年の旗揚げ以来、国内外さまざまの場所で演劇をつくってきた三条会が、ついに本拠地を手に入れたという報せは我が家を乱れ飛び、心はその話題で持切りだった。4月の落成に至るまでの事情は、Wonderlandに掲載された関美能留のインタビューに詳しい。戯れに、昨年梨園を賑せた中村屋の「ボス」襲名の言祝ぎに倣うなら、「新しい三条会」の活動はここから発信されるわけで、すでに、『メディア』(静岡野外劇場「有度」、5月)、『ニセS高原から』(こまばアゴラ劇場、9月)が生れている。そのアトリエの杮落とし公演が、市民参加の狂言『新・千葉笑い』(千葉文化センターアートホール、12月8日)を間に挟みながら、霜月から師走に跨る毎週末に、週変りで上演された。

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こまつ座『兄おとうと』

◎「唄芝居」の愉しさ  『兄おとうと』は、今やこまつ座のお家芸となった「唄芝居」の真骨頂である。「吉野作造の評伝劇」というと何だか堅苦しそうだし、「憲法をわかりやすく考える」などと云われたらヤッパリイイデスと腰が引けてし … “こまつ座『兄おとうと』” の続きを読む

◎「唄芝居」の愉しさ

 『兄おとうと』は、今やこまつ座のお家芸となった「唄芝居」の真骨頂である。「吉野作造の評伝劇」というと何だか堅苦しそうだし、「憲法をわかりやすく考える」などと云われたらヤッパリイイデスと腰が引けてしまいそうだが、そうした主題を愉しく伝えるのが、一つ「唄」の効用である。そして、いかな偉人も「人びと」の一人であるというユーモア感覚が、学者と役人の、国家や憲法をめぐる議論を、「人びと」の暮しにまで降ろしてくれる。初演と変らぬ、辻萬長・剣幸・大鷹明良・神野三鈴・小嶋尚樹・宮地雅子という練達の俳優六人を擁し、戯曲の持つ明るさや軽演劇調の笑いを、鵜山仁がたっぷり懐の深い演出で包みこむ。戯曲と俳優、演出家、そしてスタッフの幸福な出会いが結晶したアンサンブルは、作品ごとにプロデュース・システムをとるこまつ座でも出色の座組みである。

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庭劇団ペニノ「ダークマスター」

庭劇団ペニノ「ダークマスター」公演は不思議な芝居でした。物語に起承転結はあるのですが、それが大事かというと、どうもそうではなさそうです。オブジェというか、大がかりな舞台セットが圧倒的な存在感で迫る芝居。ほとんどそれに尽きるようなお話だったといえばいいのではないでしょうか。ただ、その先が問題ではありますが。

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くろいぬパレード「ヤモリ」

家族って何なんだろう。 血の繋がりって何なんだろう。 めまぐるしい日々の中で私は どれだけのことを見落としているんだろう。 色々なことを考えさせられた作品でした。 以下「あじさいがごとく」をご覧ください。

家族って何なんだろう。
血の繋がりって何なんだろう。
めまぐるしい日々の中で私は
どれだけのことを見落としているんだろう。

色々なことを考えさせられた作品でした。
以下「あじさいがごとく」をご覧ください。

中野成樹インタビュー

インタビューランド第4回 「根っこはないけど大切にしたいものはある-『誤意訳版』翻訳劇の源」を掲載しました。
「中野成樹(POOL-5)+フランケンズ」の中野さんは、昨年岸田國士戯曲賞を受賞したチェルフィッチュの岡田利規さんらと共に、横浜STスポットの契約アーティストとして知られ、「誤意訳」と銘打って翻訳劇に取り組む異色の演出家です。東京国際芸術祭「アメリカ現代戯曲&劇作家シリーズ・ドラマリーディング」で『セックスハビッツ・オブ・アメリカンウィメン』」(2月11日-12日)の演出を担当。今年の活躍が期待される1人です。いまなぜ翻訳劇か、誤意訳とは何か、演劇のおもしろさに迫るインタビューをご一読ください。聞き手はwonderland執筆者でもある柳沢望さんです。