A.C.O.A.「-共生の彼方へI-霧笛」

◎犬吠埼灯台の霧笛舎と共演 6月に東京公演も
カトリヒデトシ

「-共生の彼方へI-霧笛」公演チラシ太古の恐竜の咆哮がカマボコ型の天井に跳ね返り、楼内に響く。その力、その哀切にこちらの琴線がかき鳴らされる。
音響的に「返し」がどうとか全く関係ない。すばらしい残響とは無縁でもその生の声による余韻こそ、今、ここでしか見られない演劇の醍醐味を確かに体感させてくれる。

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COLLOL「このままでそのままであのままでかみさま」

◎寒さと孤独、そして「ヨブ記」
鼎談(芦沢みどり、田口アヤコ、北嶋孝)

「このままでそのままであのままでかみさま」公演チラシ芦沢 今回のCOLLOLの公演『このままでそのままであのままでかみさま』について、最初に編集部からいただいたのは劇評を書かないかと言う話だったんですが、今回の作品は非常に色々な要素があるので、一人で書くよりは、鼎談にした方がいいと思ったんです。鼎談というより、私と北嶋さんが田口さんに質問する場になってしまうかと思うのですが。まずは会場のBankART Studio NYKですが、3月28日の夜、本当に寒くて使い捨てカイロを渡されて。その印象が強い。だだっぴろい横長の倉庫ですね。それでまずお聞きしたいのは、場所が先にあって、それに合わせて作品を作ったのか、それとも作品が先なんでしょうか。

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3人が語る「2010年5月はコレがお薦め!」

【3人共通のお薦め】
「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」公演チラシチェルフィッチュ「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」(ラフォーレミュージアム原宿、5月7日-19日)
★カトリヒデトシさんのお薦め
渡辺源四郎商店「ヤナギダアキラ 最期の日」(ザ・スズナリ、5月2日-5月5日)
ロロ「旅、旅旅」(王子小劇場、5月6日-9日)
・京都×横浜プロジェクト2010「木ノ下歌舞伎 勧進帳」(横浜・STスポット5月13日-17日、京都・アトリエ劇研5月27日-30日)
★鈴木励滋さんのお薦め
ハイバイ「『ヒッキー・カンクーン・トルネード』の旅2010」(アトリエヘリコプター5月16日-23日、桜美林大学プルヌスホール5月25日-26日、福岡・西鉄ホール5月29日-30日)
中野成樹+フランケンズ「寝台特急“君のいるところ”号」(こまばアゴラ劇場、5月20日-30日)
マームとジプシー「しゃぼんのころ」(横浜・STスポット、5月26日-31日)
★徳永京子さんのお薦め
・「モジョ ミキボー」(下北沢OFF・OFFシアター、5月4日-30日)
ブルドッキングヘッドロック「Do!太宰」(三鷹市芸術文化センター・星のホール、5月14日-23日)
サスペンデッズ「2010億光年」(東京芸術劇場小ホール2、5月22日-30日)

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「千種セレクション」報告(後編)

◎シンポジウムと四劇団の公演について
カトリヒデトシ

(この記事は184号に掲載された「千種セレクション」報告(前編) の続きです)
水牛編集長にメルマガで取り上げていただいたが、少し説明を補足したい、年間400本ほど観劇をしているが、当然のこと全てを見るにはほど遠い。「全国の演劇」をとても把握できるわけではない。しかし東京が演劇の中心とも思わない。できるなら地方の状況や取り組みにも触れたいと願っている。そこで昨年から注目する団体の東京外公演を見にいこうと取り組み始めた。昨年は、ハイバイ名古屋、北九州公演、東京デスロック青森公演、第七劇場北海道公演、チェルフィッチュ伊丹公演、柿喰う客名古屋、三重公演などである。普段東京で見ている団体が異なる場所、異なる空間で行う公演を見るだけでなく、その劇場がある地域の様子や演劇状況をできるだけ見聞することによって、地域の演劇の状況をすこしずつ知ることができればと思っている。

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劇団掘出者「まなざし」

◎見えない演劇
黒川陽子

「まなざし」公演チラシ「嘘つきのパラドックス」というものがある。「クレタ人は嘘つきであると、クレタ人が言った」と言うとき、「クレタ人は嘘つきである」という部分が正しくても正しくなくても矛盾を生じてしまうというものだ。このときクレタ人は嘘つきなのか、嘘つきでないのか。もし「どちらでもない」と言うことができるとして、それでもなお、クレタ人は、いる。「嘘つき」というアイデンティティも、「嘘つきでない」というアイデンティティも持つことのできないまま、ひたすら不安定な存在として。劇団掘出者第7回公演『まなざし』は、【演劇】が「嘘つき」というアイデンティティも「嘘つきでない」というアイデンティティも持つことのできないまま、強制的に存在させられてしまったかのような、作品自体が巨大な打消し線を伴っているような、奇妙な舞台だった。

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3人が語る「2010年4月はコレがお薦め!」

【3人共通のお薦め】
鰰(はたはた)「動け!人間!」(アトリエ春風舎4月16日-5月5日)

「お薦め」鼎談★カトリヒデトシさんのお薦め
世田谷シルク「春の海」(シアター711 4月8日-11日)
箱庭円舞曲「とりあえず寝る女」(駅前劇場4月2日-6日)
柿喰う客「八百長デスマッチ/いきなりベッドシーン」(タイニイアリス 4月15日-18日 <大阪公演>八百長デスマッチ 4月23日-25日 in→dependent theatre 2nd いきなりベッドシーン 4月26日-28日 in→dependent theatre 1st)
★鈴木励滋さんのお薦め
青年団リンク 口語で古典「武蔵小金井四谷怪談」(こまばアゴラ劇場4月17日-29日)
コマツ企画「背伸び王」(下北沢 楽園4月21日-25日)
風琴工房「おるがん選集 春編」(浅草橋ルーサイトギャラリー 4月26日-29日)
※二作品ずつ「桜編」「藤編」があるため、劇団ホームページで上演時間ご確認を。(【桜】「寡婦」原作 ギ・ド・モーパッサン 「濹東綺譚」原作 永井荷風【藤】「親友交歓」原作 太宰治 「流刑地にて」原作 フランツ・カフカ)
★徳永京子さんのお薦め
・「BLUE/ORANGE」(ワーサルシアター4月22日-5月2日)
シス・カンパニー「2人の夫とわたしの事情」(Bunkamuraシアターコクーン 4月17日-5月16日)
文学座「わが町」(全労済ホール/スペース・ゼロ4月9日-18日)

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「千種セレクション」報告(前編)

◎充実したワークショップやディスカッション
カトリヒデトシ

「千種セレクション」公演チラシ昨年から、時折名古屋や三重、関西方面へ芝居を見に行くようになった。
今回は名古屋で1月から2月にかけて行われた、千種文化小劇場の自主企画「千種セレクション」に通った。その報告をしたい。
「千種セレクション」を企画した、千種文化小劇場は「ちくさ座」という全国的に見ても特筆すべきすばらしい円形劇場をもつ施設である。251席という適度なキャパシティで、駐車場や練習室もある。八角形の舞台面の周りに最大9面の客席が設置可能で、各ブロック5段の固定の客席が組まれている。高低差があるため、実に見やすい環境である。

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3人が語る「2010年3月はコレがお薦め!」

「エーブルアート・オンステージ コラボ・シアター・フェスティバル2010」チラシ★カトリヒデトシさんのお薦め
ろりえ「恋2」(王子小劇場、3月3日-7日、一心寺シアター倶楽、3月13日-14日)
qui-co.キコ「はなよめのまち」(王子小劇場、3月25日-29日)
三匹の犬「現実はきびしく私たちは若いけれど要求は唐突で思い切るという手もあるかもしれない」(pit北/区域、3月25日-29日)
★鈴木励滋さんのお薦め
・「エーブルアート・オンステージ コラボ・シアター・フェスティバル2010」Bプロ「≒-にあいこーるのじじょう」(アサヒ・アートスクエア、3月18日・19日)
・「東野祥子solo dance VACUM ZONE」(シアタートラム、3月5日~7日)
時間堂「月並みなはなし」(座・高円寺、3月11日~14日)
★徳永京子さんのお薦め
・「老人ホームREMIX#1 野村誠のポストワークショップ」(BankArt Studio NYK、3月14日)
・「FABIEN PRIOVILLE」(彩の国さいたま芸術劇場3月18日)
726「太宰治 走れメロス」(下北沢OFF・OFFシアター、3月18日~23日)

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三条会「S高原から」

◎恋愛、「いざ、生きめやも。」
杵渕里果

三条会「S高原から」公演チラシ高校の、教室にあるような生徒用の机が、十卓ほど、スズナリの狭い舞台に並んでいた。
学生服の男優四人と、セーラー服ではないが黒ワンピース、喪服の女優が入場し、着席する。
と、この教室の先生なのか、カジュアルな服装の、ひときわ背の高い男優が来て、平田オリザ『S高原』、冒頭のト書きを読み始める。
彼は、「上手」「下手」を、舞台の前と奥、つまり教室の前後の出入り口にふりわけた。先生が合図を送ると、学生服の男優たちはノートを開き、滑らかなセリフを朗読の身振りで、演じ始めた。

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3人が語る「2010年2月はコレがお薦め!」

【3人共通のお勧め】

「わたしたちは無傷な別人であるのか?」
チェルフィッチュ公演チラシ

チェルフィッチュ「わたしたちは無傷な別人であるのか?」(横浜STスポット2月14日-26日、横浜美術館3月1日-10日)
★カトリヒデトシさん
monophonic orchestra「センチメンタリ」(2月5日-11日、横浜STスポット)
谷賢一単独企画公演「幸せの歌をうたう犬ども」(2月2日-4日、新宿タイニイアリス)
ニットキャップシアター「踊るワン‐パラグラフ2010」(2月18日-21日、ザ・スズナリ)
★鈴木励滋さん
岡崎藝術座リズム三兄妹」(再演) (2月 27日- 3月 2日、横浜のげシャーレ )
モモンガ・コンプレックス「ウォールフラワーズ。」(2月11日-14日、キラリ☆ふじみ)
We dance (2月13日-14日、横浜市開港記念会館)
★徳永京子さん
モダンスイマーズ「凡骨タウン」(2月5日-21日、東京芸術劇場 小ホール1)
E-Pin企画10周年記念公演+城山羊の会「イーピン光線」(2月9日-14日、下北沢駅前劇場)
・池田扶美代+アラン・プラテル+ベンヤミン・ヴォルドンク「ナイン・フィンガー Nine Finger」(2月6日-7日、彩の国さいたま芸術劇場 大ホール)

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